一井先輩の「旅行では気付かない」現地の暮しのお話しに対して、私は「旅行をして初めて気付く」ドイツにつきお話し致します。

2012年6月23日より7月10日迄、16泊18日というやや長めの一人旅で、旧東独から 中西部を巡って参りました。2週間以上に亘った背景には、三つの大きな目的があったからです。それは ① 横浜日独協会とフランクフルト独日協会の協力提携協定 ② 東西ドイツの壁崩壊後20年余りを経過した旧東ドイツの現状を見ること ③ デュッセルドルフ男声合唱団20周年記念演奏会への出演の三つです。

特に旧東独については、1970 年代に家族と共に約5年をフランクフルトで過ごしたのですが、当時小さな子供たちを抱えてはなかなか休暇とは言え東独への旅行はそう簡単ではなかった為、現在の東側の諸都市を巡ることには大きな興味がありました。

旅程は下の地図に示した通り、フランクフルトから一路東北へ、いわゆる『ゲーテ街道』に沿いライプツィヒ-ドレスデン-ベルリン-ワイマール、途中プラハを挟み1週間を先ず東側で過ごしたことになります。既にお気付きかも知れませんが、我々音楽を愛する者にとり、この辺りはゲーテは勿論ですが、バッハやメンデルスゾーンそしてモーツアルト縁の場所が沢山あることでも有名で、これもまた楽しみの一つでした。

今回は車での移動を固く禁じられた?為に、全てユーレイルパスによる汽車の旅で、自由にいつでもどこにでも行けるまさに気ままな一人旅となりました。車窓を眺めたり本を読んだり、また同席の人たちとおしゃべりをするなど、車では出来ないゆったりとした道中となりました。ただ残念なことに、孫と柴犬の世話の為、八祚子が共に旅に出かけることが出来ませんでしたので、何とか別の機会にトライしたいと思っております。

旧東独に属するザクセン州やチューリンゲン州に足を踏み入れ先ず気付いたことは、かって原発や大気汚染等で空気が濁っていたと言われた東側にそのような兆候が全く見られず、西方ドイツの諸都市と殆ど変らないこと、ドイツらしい平坦な緑のクリーンイメージがこの東側諸都市でも自然に出来あがっていることでした。

個々の街の特徴や印象については、下記の<一言メモ>や<各都市のキーワード>をご参照いただきたく、本レジメでは省略いたしますが、筆者にとり特に印象的であったのは、『 エルベ河のフィレンツェ 』と呼ばれるドレスデンのエルベ河畔プロムナードと歴史的な建物との美しいコントラスト、特に夕映えに輝くなだらかに湾曲したエルベ河の美しさ、またゲーテが50余年の人生を捧げ、大臣としてその発展に尽くした可愛らしくも何とも言えない雰囲気を漂わせた古都ワイマール、1700通を超えるラブレターを送り続けたシュタイン夫人がゲーテハウスからわずか2~3分の館に住んでいたというのにも拘わらず-。そしてバッハが眠っているライプツイヒのトーマス教会など。プラハは晩年のモーツアルトを暖かく迎えてくれた街。当時街中では『フィガロ』の旋律を口ずさむ人も多く、また『ドンジョバンニ』はプラハで完成・初演されました。可愛らしい『エステート劇場』や『モーツアルト記念館』で往時を偲ぶことが出来ます。

ドレスデンから2時間で首都ベルリン、流石ヨーロッパ有数の大都会。文化、芸術、政治何でもござれ、世界に冠たるベルリン・フィルハーモニーも楽しめますよ。チケットも当日手頃な値段で入手可能です。ベルリンと言えば矢張り歴史です。1989年に東西の壁が崩壊し、その翌年にはドイツ再統一がなったのです。ブランデンブルク門の前に立つと東西冷戦の過去が実感として感じられます。

今や何か去り難い東側諸都市を後に再びフランクフルトへ戻り、赴任中に本当に家族ぐるみでお世話になった2家族を訪問し、30~40年ぶりの再会を喜び乾杯! 翌日は筆者が事務局を務める横浜日独協会とフランクフルト独日協会の提携協定記念式へ。神聖ローマ帝国52名の等身大の皇帝像の見守る市庁舎『皇帝の間』で両会長の調印式、市長や両協会の会員も出席、夜はヘッセン州地元ワインでの交流会となりました。

続く1週間はハイデルベルク経由で父なるライン河畔のマインツ-ケルン-ボン-の諸都市を巡りました。ここでは河と新緑と河畔の赤れんがの建物が美しい対比を見せるこれぞドイツカラ―ですね。今回は時間が無かったのですが、これにライン下りの船に乗れば最高です。これら旧西ドイツの街は流石EUの牽引国ドイツの都市らしく、東側と一味違う近代的な明るさが際立っていながら、古き良き時代とも上手く溶け合っています。特にライン河畔の諸都市は運輸、交通の重要拠点としても発展してきました。

ハイデルベルクはドイツ最古の大学街で小説『アルト・ハイデルベルク』の舞台、またマインツは神聖ローマ帝国の重要な宗教上の拠点で印刷術のグーテンベルクの故郷、またケルンはかなり遠方からはっきり見える大聖堂に加え、中央駅では女性に人気のケル二ッシュヴァッサ―(香水)4711の大きな宣伝アーチが目を引いています。旧西独の首都であったボンは、静かな大学街で連邦歴史博物館等を除いては、殆ど以前の首都機能を感じさせません。それよりも此処はベートーベンの故郷として知られ、あちこちの銅像や勿論その生家もよく知られています。意外と訪問者が少ないのは晩年をボンで過したシューマン夫妻が中央駅に近い旧墓地の美しい墓に眠っています。偶々訪れた日には色とりどりの美しい花々が印象的でした。そして最後の訪問地デュッセルドルフでは各地から集った『デュッセルドルフ男声合唱団』のメンバーに合流し、ヨハネス教会での20周年記念演奏会を、日独両国聴衆を迎え楽しく終え一人旅の幕を閉じました。

壁崩壊後20年余を経過した旧東ドイツの街に住む老若男女約15名へのインタヴューも今回の目的の一つでした。狙いは統一時点迄東西に分かれての生活を余儀なくされていた人々が、今何を感じ、どのような生活を送っているのかを直接聞いてみることでした。その結果は自分の予想とはかなり異なり、下記の<街角インタヴュー>のような結果となりましたのでご覧ください。ご静聴有難うございました。


旅程
月日 都市(泊)
(鉄道所要時間)
人口(千人) 一言PR
6月23日 成田~機内      
  フランクフルト(0)
(4.5時間)
ヘッセン 665 ユーロの本拠地・ゲーテのふるさと
6月23日~
25日
ライプツィヒ(2)
(4.5時間)
ザクセン 515 菩提樹の下でバッハを聴きたい学芸の街
6月25日~
26日
プラハ(1)
(2.0時間)
(チェコ) 1,200 中世の空気に満ちた千年の歴史を誇る百塔の街
6.月26日~
28日
ドレスデン(2)
(2.0時間)
ザクセン 512 “エルベ河のフィレンツェ”通り美しい街
6月28日~
30日
ベルリン(2)
(2.5時間)
ベルリン 3,432 ドイツ現代史の象徴として輝くメトロポリス
6月30日~
7月1日
ヴァイマ―ル(1)
(2.5時間)
チューリンゲン 64 ドイツ古典文化が花開いたゲーテゆかりの街
7月1日~
4日
フランクフルト(3)
(1時間)
ヘッセン 665 ユーロの本拠地・ゲーテのふるさと
  *横浜-フランクフルト日独協会;姉妹協定調印式
7月4日~
5日
ハイデルベルク(1)
(1.0時間)
バーデン-ヴュルテンベルク 146 旅情溢れる風景が誰をも詩人にしてしまう
7月5日~
6日
マインツ(1)
(2.0時間)
ラインラント‐プファルツ 198 グーテンベルクの生れた重要な宗教都市
7月6日~
7日
ケルン(1)
(0.5時間)
ノルトライン‐ヴェストファーレン 995 世界に誇る大聖堂の威容に感動
7月7日 ボン(0)
(1.0時間)
318 ベートーベンの故郷で落着いた大学街
7月7日~
9日
デュッセルドルフ(2)
(1.5時間)
584 ハイネを生んだ緑豊かな大商業都市
  *デュッセルドルフ男声合唱団20周年記念演奏会
7月9日 フランクフルト(0)
機内(1)
ヘッセン 665  
7月10日 成田      


各都市をキーワードで訪ねると
ライプツイヒ ・バッハとトーマス教会 ・ライプツイヒ大学 ・ファウストと酒場 
・ゲーテ街道 ・ゲーテと森鴎外 ・メンデルスゾーン
プラハ ・黄金のプラハ ・百塔の街 ・モルダウ河とカレル橋  ・プラハの春
・エステート劇場とモーツアルト
ドレスデン エルベ河のフィレンツェ ・百塔の都 ・マイセン  ザクセン王国の栄華
・飛ぶ教室 ・ゼンパーオペラ
ベルリン 東西の壁崩壊とドイツ再統一 ・博物館島 ・ポツダム広場
 楽器博物館とベルリンフィル ・ク―ダム ・フンボルト大学
ヴァイマ―ル ・ヴァイマ―ル公国とアウグスト公 ・国民劇場 ・ゲーテとシラ― 
・シュタイン夫人 ・大公家墓所 ・バウハウス
フランクフルト ・旧市庁舎と皇帝の間 ・ゲーテハウス ・マイン河とオペラ座 
・金融の中心とEU ・ヴェッツラ―とロッテの家
ハイデルベルク ・ネッカー川と古城 ・哲学者の道 ・アルトハイデルベルク 
・ハイデルベルク大学と学生牢 ・ツム-ローテン-オクセン
マインツ ・ライン河とマイン川の合流点 ・大聖堂とマインツ大司教 ・交易上の要地
・グーテンベルクの生地
ケルン

・大聖堂と文化遺産 ・ケルシュビール ・4711 オーデコロン 
・ルール工業地帯 ・博物館/美術館の街

ボン ・独連邦共和国の旧首都 ・ベートーベンの故郷 ・べートーべンハウス
・連邦歴史博物館 ・シューマン夫妻と旧墓地
デュッセルドルフ ・ルール工業地帯の重要拠点 ・国際商工業都市と日系企業 
・インマーマン通り ・ネアンデルタール人 ・アルトビール

街角インタビューに挑戦、その結果は?
  1. 自分は昔からこの○○の街に住み、この街を愛し大きな不満はない。家族も今の生活に満足している。
  2.  
  3. 街の緑も美しくインフラ面も良好。若者や学生もこの街から出るのではなく、むしろ流入してきている。
  4. 壁の崩壊時つまり20数年前に見られた東西ドイツの軋轢は殆どない。唯一東側の失業率がなお西側より若干高く推移している。
  5. 東西問題があまり表面化していない反面、何故ドイツ国民がスペインやイタリアの赤字の面倒を見るのか?

旅の写真

フランクフルト中央駅

ライプツィヒ メンデルスゾーン居室

ライプツィヒ トーマス教会前のバッハ銅像

ライプツィヒ ファウストの
アウウェルスバッハ酒場

バッハ墓所

チェコ・プラハ モルダウ河畔・カレル橋

ドレスデン エルベ河畔

ドレスデン ツヴィンガー宮殿庭園

ベルリンフィル

ベルリンフィルハーモニーホール

ワイマール国民劇場 ゲーテ・シラー銅像

フランクフルト 旧オペラ座

フランクフルト 旧市庁舎

マインツ ライン河畔

ボン ベートーベンハウス

デユッセルドルフ男声合唱団20周年記念演奏会